一級建築士試験(学科・製図)を独学で挑戦するメリットとデメリット

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一級建築士

こんにちは、独学家(セルフ・ラーナー)のKuroです。

このブログでは、独学での大学受験や一級建築士試験、海外留学についてのノウハウを発信しています。

こちらの記事では、一級建築士試験の学科・製図共に独学で一発合格したKuroが、一級建築士試験を独学で挑戦するメリットとデメリット、について考察します。

はじめに

一級建築士試験の受験を計画される方が先ず初めに悩むことは、独学で挑戦するか、または資格学校に通うかということではないでしょうか。

一級建築士は難関資格の一つであり、独学で合格することは難しいと言われています。特に、製図試験を独学で合格することは至難と言われています。

しかし、資格学校に通うには相応の資金が必要となります。そのため、先ずは独学で勉強してみようと考える受験者も多いのではないでしょうか。

そこで、こちらの記事では、これから一級建築士試験を受験されようと考えている方へ対して、一級建築士試験を独学で挑戦するメリットとデメリットを考察してみます。

独学のデメリット

初めにデメリットから考察していきます。

まず、私の考える独学のデメリットはこちらとなります。

一級建築士試験を独学で挑戦するデメリットは、疑問の解決、限られた参考書、モチベーションの維持、勉強時間の確保、である。
一級建築士試験を独学で挑戦するデメリット

では、一つずつ見ていきましょう。

疑問を直ぐに解決できない

最初のデメリットとして、疑問を直ぐに解決できないことが挙げられます。

学科試験の勉強をしていると、理解が難しい場面に直面することがあります。例えば、学科Ⅳ(構造)の計算問題は、数学に苦手意識がある人にとっては鬼門となります。また、学科Ⅲ(法規)でも、条項が複雑に絡み合う問題は、それを読み解くのに苦労するかもしれません。

独学で勉強すればこのような課題に直面する一方で、資格学校に通えば講師が親身になって教えてくれるため、比較的容易に疑問を解決することができるでしょう。

また、製図試験を独学で挑戦した場合、自身で製図した内容を添削してくれる人がいません。そのため、採点ポイントを理解しつつできる限り客観的に自身の製図内容を評価しなければなりません。その上で、自己評価を信じながら自身の製図を改善し続ける必要があります。これは簡単な作業ではなく、製図試験を独学で突破することが難しい理由の一つがここにあります。

製図の独学が難しい理由その1

自身の製図内容を客観的に評価して改善し続けることが難しい

一方で、資格学校に通えば、自身の製図内容を講師に添削してもらえます。添削に従って製図を改善していけば、少しずつ合格図面に近づくことができるでしょう。

※次の記事では、製図試験の採点ポイントと必要な能力について紹介しています。

参考書が限られる

次のデメリットとして、手に入る参考書が限られることが挙げられます。

学科の場合は市販でも優良な参考書があり、またフリマを通じて過去の資格学校のテキストを手に入れることができるでしょう。一方で、製図試験は市販の参考書が限定的です。

製図試験を突破するためには、その年の課題テーマを踏まえながら、プランニング力と記述力を磨く必要があります。しかし、その年の課題テーマを踏まえた市販の参考書は、日建学院が毎年8月末に出版する「1級建築士 設計製図試験課題対策集」しかありません。そのため、独学では課題テーマを踏まえた製図の練習が少ししかできません。製図試験を独学で突破することが難しい二つ目の理由がここにあります。

製図の独学が難しい理由その

課題テーマに即した市販の参考書が少ない

一方で、資格学校へ通えば、その年の課題テーマに応じた解説書や問題へアクセスすることができます。課題テーマに応じた問題を何度も解いて、講師の添削を受けられる。これが資格学校へ通う大きなメリット、つまり独学のデメリットでしょう。

モチベーションの維持が難しい

3つめのデメリットとして、モチベーションの維持が難しいことが挙げられるでしょう。

独学で一級建築士試験へ挑戦する方の中には、学科試験で挫折してしまう人が多いのではないでしょうか。というのも、学科試験を突破しさえすれば、製図試験に進むことができ合格まであと一歩となります。そのため、製図受験者は、高いモチベーションを保って勉強していると考えられます。

学科に目を向けると、合格するためには5科目をくまなく勉強する必要があり、それでも合格率は毎年15~20%程度です。そのため、独学者は一回受験して不合格であったことから、合格は不可能だと悟って建築士の夢を諦めてしまう人もいるのではないかと思います。

しかし、資格学校へ通えば周りにライバルがいて刺激になるでしょう。また、資格学校へ通う費用を支払っていることから、費用の対価を得るために何とか合格しようと勉強を継続することも考えられます。資格学校へ通った方が試験へ執着することができ、自ずと合格の可能性も高まるのではないでしょうか。

勉強時間を確保しにくい

最後のデメリットとして、勉強時間を確保しにくいことが考えられます。

これは3つ目のモチベーションとも関係しますが、独学で勉強を継続することは強い精神力が必要となります。勉強スケジュールを決めて取り組んだとしても、やる気が出ないからと言って怠けてしまうかもしれません。また、仕事が忙しい時などは、勉強時間を犠牲にして仕事へ打ち込んでしまうことも考えられます。

しかし、資格学校へ通えば強制的に勉強する環境に置かれます。毎週資格学校へ通い、膨大な課題を与えられ、試験勉強に毎日取り組む日々が続きます。このような環境に身を投じることにより、怠けてしまいがちな人でも、勉強時間を確保することができます。

独学のメリット

次に、メリットを考察していきます。

私の考える一級建築士試験を独学で挑戦するメリットはこちらとなります。

一級建築士試験を独学で挑戦するメリットは、限定的な費用、自由な勉強計画、思考力の醸成、自信を得る、ことである。
一級建築士を独学で挑戦するメリット

では、一つずつ見ていきましょう。

費用を抑えられる

独学のメリットとして先ず挙げられるのが、費用を抑えられることでしょう。

資格学校へ通うとなると、相応の通学費用を支払う必要があります。参考として、有名な資格学校への通学費用をみてみましょう。

学校名科目費用(税込)
総合資格学院
1級建築士ストレート合格必勝コース(アウトプット強化講座付)
学科・製図1,518,000円
日建学院
学科スーパー本科コース
学科869,000円
日建学院
設計製図本科コース
製図550,000円
TAC
一級建築士 総合学科本科生
学科440,000円
TAC
 一級 総合設計製図本科生
製図319,000~396,000円
資格学校の授業料の例(令和4・5年向け)

こちらの表をみると、学科と製図の両方に通学するためには100万円以上の費用が必要となります。

一方で、独学で挑戦する場合の必要費用は、参考書代として5万円程度、製図用具代として5万円程度の、計10万円程度となります。これは資格学校へ通学する場合に比べて、約1/10の費用に抑えられるということです。

自由に勉強計画を立てられる

独学の第2のメリットは、自由に勉強計画を立てられることが挙げられます。

デメリットとして勉強時間の確保が難しいと考察しましたが、裏を返すと自由に勉強計画を立てられるということです。

資格学校へ通学すると、毎週決まった時間に決まった場所へ行き、受講しなければなりません。強制的に勉強時間を確保できることは良いのですが、通学に時間がかかることや、どうしても外せない用事があった時に不便です。

しかし、独学の場合は通学に要する時間も勉強に充てられます。また、もちろん毎日決まった時間に勉強することが望ましいものの、自身の都合に応じて勉強する時間を変更できることは大きなメリットです。

更に、資格学校へ通学すると学校の学習計画に沿って勉強せざるを得ません。一方で、独学の場合は得意な科目の時間を割いて苦手な科目を勉強する時間に充てるなど、自身で柔軟に学習計画を立てられることもメリットです。

思考力が身につく

第3のメリットは、合格に必要な思考力が身につくことです。

資格学校に通学すると、各科目や製図のエッセンスを講師が丁寧に説明してくれます。また、疑問点があった時は丁寧に教えてもらえるでしょう。しかし、他人から教えてもらってばかりいると、試験に必要となる考える力を養うことができません。

これは特に製図試験に当てはまります。資格学校では上手く製図を進めるための定石を効率よく学ぶことができる一方で、定石に囚われすぎる恐れがあります。

事例として、ブログ主であるKuroが受験した平成30年のケースを紹介します。

平成30年のケース

平成30年の課題では「一体的利用」が問われました。この時、Kuroは一体的利用を達成するために最も重要なことは、メインエントランスを桜並木沿いの敷地西側に設けることだと考えました。

資格学校で歩道付き道路や敷地の長辺に利用者用アプローチをとることが定石と学んだ方の中には、歩道付き道路がある東側のアプローチや、駐車場のある北側からのアプローチとされた方もいるのではないでしょうか。

しかし、正解(標準解答例)は桜並木沿いの西側アプローチでした。

このように、定石ばかり学んでしまうと、自分自身で考えて柔軟な計画を練ることができなくなる恐れがあるのです。

そして、ここに独学の強みがあるとKuroは考えています。プロに定石を教わるとそれに囚われる可能性がある一方、独学の場合は柔軟に計画することができ、定石外の問題が出てきた時にも対応できる可能性があるのです。

※こちらの記事では、独学者の製図試験の勉強法を紹介しています。

自信がつく

第4のメリットとして、独学で合格すれば自信を得ることができます。

難関資格である一級建築士試験に独学で合格すれば、自分自身で計画した勉強スケジュールや勉強方法に自信を持つことができます。そして、このような経験を一度すれば、次の挑戦も何とか自力で乗り越えられるという気持ちになります。

次の挑戦とは、仕事で困難に直面した時かもしれませんし、別の資格や試験を受験する時、はたまた海外留学を志した時かもしれません。いずれの場合でも、先ずは自分自身で課題を分析して、問題を解決する道筋を立て、根気強く実行していくことが必要になるでしょう。そして、難関資格である一級建築士試験を独学で突破した人ならば、自信をもってこれらの挑戦に立ち向かうことができるはずです。

ブログ主のKuroも、一級建築士の資格を得た後に、建築・デザイン系大学院への留学を志しました。留学には英語試験(TOEFL iBT)やエッセイの準備が必要でしたが、一級建築士試験を独学で突破した自信を基に、留学エージェントを頼らず独力で必要書類を全て準備して留学しました。

まとめ

こちらの記事では、一級建築士試験を独学で挑戦するメリットとデメリットを紹介しました。

独学のメリット
  • 費用を抑えられる
  • 自由に勉強計画を立てられる
  • 思考力が身につく
  • 自信がつく
独学のデメリット
  • 疑問を直ぐに解決できない
  • 参考書が限られる
  • モチベーションの維持が難しい
  • 勉強時間を確保しにくい

独学はデメリットもありますが、メリットも多い挑戦です。

周りの受験者が資格学校に行っているからといって、自身も資格学校へ通いたくなるかもしれません。しかし、独学のメリット・デメリットをよく把握された上で、資格学校への通学を検討することをおすすめします。

特に、勉強時間の確保さえできれば、学科は独学でも十分合格可能な試験です。また、学科試験に一度合格すれば、製図試験を合計3回も受験する機会が得られます。そのため、製図試験も先ずは1回独学で挑戦されてはどうでしょうか。費用を抑えられることはもちろん、思考力を養い、自信をつけられる絶好の機会です。


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