一級建築士試験(設計製図)に独学で合格するための勉強法を解説します

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一級建築士

こんにちは、独学家(セルフ・ラーナー)のKuroです。

このブログでは、独学での大学受験や資格試験、海外留学についてのノウハウを発信しています。

こちらの記事では、一級建築士試験の学科・製図ともに独学で一発合格したKuroが、製図試験に合格するための勉強方法、について紹介します。

はじめに

一級建築士試験(設計製図)に合格するためのポイントと必要な能力について解説します」では、製図試験に合格するためのポイントと能力について紹介しました。

採点ポイントに対応するために必要な能力

そして、こちらの記事では、プランニング力、製図力、記述力をそれぞれ養うための勉強法について解説します。

Kuro
Kuro

これらの能力を養うことができれば、独学でも製図試験に十分挑戦することができるでしょう。

プランニング力

先ず、プランニング力です。

プランニング力は、空間構成、建築計画を中心とした採点ポイントに影響する重要な能力となります。

しかし、そもそもプランニング力とは何を指すのでしょうか?

私は、設計条件の読み解く力と、エスキス力に分けられると考えています。

設計条件を読み解く力

設計条件を読み解く力とは、設計条件に記載されている敷地及び周辺条件、建築条件、そして留意事項を踏まえて、設計する上で大切な要素を抽出する力となります。

敷地及び周辺条件は、主に敷地図に記載されています。敷地図を眺めて、道路の位置と幅員、周辺地域の用途、周辺建築物の用途、公園の有無、などの外部環境を確認することにより、対象とする敷地の位置付けを把握します。

建築条件は、階数、床面積、容積・建蔽率、要求室、外部環境との繋がりなどを確認することにより、どのような内部環境をもった建築物を設計する必要があるのか、を把握します。

最後に留意事項は、Ⅰ設計条件4.留意事項とⅡ要求図書3.計画の要点等を踏まえて、建築物を設計する上で何を重点的に考慮しないといけないのかを把握します。

設計条件を読み解く勉強法

では、どうすればこれらの能力を養うことができるのでしょうか。

最も効果的なのは、過去複数年の設計製図の問題、特にⅠ設計条件の課題背景や、2.建築物、4.留意事項、Ⅱ要求図書3.計画の要点等、をよく読み込んでみることです。また、読み込む際は、外部環境との繋がりで留意しなければいけないこと(令和元年の眺望など)、建築内部で留意しなければいけないこと(令和2年の入居者の住みやすさなど)、例年要求されている項目当該年でのみ要求されている項目、を意識しながら読み込むとよいでしょう。

特に、当該年でのみ要求されている項目は、対象建築物を設計する上での重要なヒントとなる場合が多いため、注意深く読み込むようにしましょう。参考として、いくつかの例はこちらとなります。

重要な設計条件
  • 令和3年「テナント部門は外部から利用しやすい計画とするとともに、住宅部門との動線やプライバシーに配慮した計画とする。」
  • 令和元年「公園への眺望に配慮する」「分館と本館との来賓者の動線を適切に計画する」
  • 平成30年「隣地のカルチャーセンター、全天候型スポーツ施設及びグラウンドと一体的に使用できるように適切に計画する」
  • 平成29年「敷地の周辺環境及び景観に配慮して計画する。」
Kuro
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重要な設計条件を適切に読み解くことができれば、エスキスを進める上での手掛かりをつかむことができ、合格へ近づくことができます。

エスキス力

適切なプランニングをするために必要な次の要素はエスキス力です。これは、設計条件を踏まえて、建築物のアプローチ計画を練り、要求室を各階へ配置することです。

そして、エスキスを上手く仕上げるためには、基本的なエスキスの流れを把握することと、重要な設計条件を中心にエスキスへ反映させることです。とても当たり前なことなのですが、特に後者が出来ている人は多くないのではないでしょうか。

エスキスの勉強法

では、どうすればこのような能力を養うことができるのでしょうか。

独学でエスキスの流れを学ぶためには、資格学校のテキストをフリマで入手したり、インターネットからエスキスの手順を学んだり、「製図試験のウラ指導」などの市販参考書を購入して、これらの参考書を基に練習してみることです。

エスキスはある程度手順が決まっているため、これらの情報を基にエスキスを繰り返してみて、自分にあった流れを構築しましょう。

そして、重要な設計条件を中心にエスキスへ反映させることを学ぶためには、建築技術教育普及センターが出している過去問を基に、何度もエスキスを繰り返してみて、標準解答例と見比べることです。

Kuro
Kuro

では、私が合格した平成30年を例に取って見ましょう。

平成30年の設計課題を見たときに、何が重要な設計条件だと思われたでしょうか。もちろん全ての条件が重要なのですが、私は特に「一体的利用」というのが最も重要な設計条件だと考えました。なぜなら、Ⅰ設計条件の背景や、4.留意事項、更にはⅡ要求図書3.計画の要点等、という各所に亘って記載があるからです。

周辺施設との一体的利用を重要視したら、次は一体的利用を促す建物へのアプローチ計画や、それに伴う1階部分の配置計画、更には2.3階の配置計画を複数検討してみます。そして、複数のエスキスを仕上げてみて、標準解答例と見比べてみるのです。

標準解答例と見比べる際は、自分自身が仮定した重要な設計条件(平成30年の場合は一体的利用)がどのように反映されているか、主要な部門(平成30年の場合は健康増進部門)と管理・共用部門のゾーニング分けはどうなっているか、面積の大きい要求室や複数階に跨る要求室はどこに配置されていたか、というような観点を中心に見比べるとよいかと思います。

(公財)建築技術教育普及センターには、過去10年分の試験問題と標準解答例が載っています。仮に1年ごとに3つのエスキス案を作成すれば、合計30のエスキスを練習したことになります。他にも、日建学院が8月下旬に出版する設計製図試験課題対策集を用いて、当該年の課題に基づき練習することも効果的なエスキスの訓練となります。

平成30年の課題で一体的利用を達成するために重要なこと

平成30年の場合、一体的利用を達成するために最も重要なことは、メインエントランスを桜並木沿いの敷地西側に設けることだと私は考えました。そして、標準解答例も西側アプローチとなっています。

敷地条件を見ると、歩道付き道路がある東側のアプローチや、駐車場のある北側からのアプローチを考えたくなるかもしれませんが、それでは一体的利用を達成することはできません。資格学校では、歩道付き道路や長辺からのアプローチが製図の定石だと教わるかもしれませんが、定石だけに固執してしまうと柔軟な計画を導くことができません

そして、ここに独学の強みがあると私は考えています。プロに定石を教わるとそれに囚われる可能性がある一方、独学の場合は柔軟に計画することができ、定石外の問題が出てきた時にも対応できる可能性があるのです。

こちらの記事で紹介しているとおり、学科に受かったら製図試験を3回受けることができます。独学は難しいと言われている製図試験ですが、最初の1回目は独学で挑戦されることをおすすめします。

製図力

次に大切なのは製図力を磨くことです。製図力は、空間構成、建築計画を中心とした採点ポイントに影響する能力となります。

仮に上手いプランニングができたとしても、それを図面上で上手く表現できなかったり、図面を書くのに時間を要してしまい、中途半端な図面となってしまったら採点ポイントを大きく落としてしまいます。

上手い製図とは?

では、上手い製図とはどのようなものを指すのでしょうか。

唯一参照できるものがあるとすれば、それは建築技術教育普及センターが出している標準解答例だと私は考えています。「標準」解答例といいつつも、こちらは図面で表現されるべき内容が全て含まれています。そのため、最終的にこのような図面を3時間ほどで描けられるようになれば、十分な製図力を養っていると言えるでしょう。

製図力を養う勉強法

製図力を養う方法として、先ずは基本的な製図の流れを覚えることです。

補助線を引き、柱を描き、壁を描いていくなど、製図の基本的な流れはある程度確立されています。この流れは、資格学校のテキストや市販の参考書、一級建築士試験のブログなどから学ぶことができます。先ずは基本的な流れを学ぶことにより、効率よく製図できるようにしましょう。

次に、基本的な製図の流れを意識しながら、建築技術教育普及センターに掲載されている標準解答例をA2サイズで転写することです。

標準解答例を転写することで、合格レベルの製図を把握できると共に、自身が合格レベルの図面を描くのに何時間要しているのかを確認することができます。最終的には3時間程度で仕上げる必要がありますが、この段階の転写で3時間を切る必要は全くありません。できる限り丁寧に、何時間かけてもよいので転写することです。また、転写する際は、線の太さも意識すると共に、問題用紙のⅡ要求図書1.要求図面に記載されている特記事項も意識しながら転写するとよいでしょう。

Kuro
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始めて転写した時は、合計6時間以上を要しました。

2~3年の標準解答例を転写したら、次は自身が作成したエスキスを基に製図します。

先に述べた通り、エスキス力を養う際は、一つの問題に対して複数のエスキスを検討することが効果的です。そして、標準解答例と照らし合わせて、最も出来が良いと思えるものを基にして製図してみましょう。この時、手を抜くのではなく標準解答例と同じくらいの情報量を製図することが重要です。また、8月下旬になると、日建学院がその年の課題に応じた「設計製図試験課題対策集」を市販するので、独学者はこちらを入手してエスキスと製図練習に励むこともおすすめします。

Kuro
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製図力を向上させるためには、エスキスに基づいた製図と並行して、階段やトイレなど、ある程度「モジュール」の決まった製図を繰り返し練習することも有効です。

そして、何よりも重要なのは、自身のエスキスに基づいた図面をできる限り多く仕上げることです。

製図試験の勉強は通常、学科試験が終わった後に開始するため、正味2ヶ月半程度しかありません。この間に、課題文の読み取り方や、エスキスの方法、製図の流れ、記述のコツなどを学ばなければならないため、A2サイズの答案用紙に製図する時間は限られています。

Kuro
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合格レベルに近づくためには、できればA2サイズに20枚、少なくとも15枚程度は練習することをおすすめします。

製図力を鍛える流れ。先ずは製図の流れを把握して、標準解答例を転写する。そしてエスキスからの製図を繰り返す。
製図力を鍛える流れ

記述力

合格するために最後に重要なのは記述力です。

記述力は、構造計画と設備計画を中心として採点ポイントに影響を与えるものとなります。

一級建築士試験の答案用紙は答案用紙Ⅰ(図面)と答案用紙Ⅱ(計画の要点等)から成り立っています。どちらかと言うと答案用紙Ⅰ(図面)の方が重要であるものの、図面と一貫性のある計画の要点等を記述しないと、説得力のないものとなってしまいます。

よい記述とは?

では、よい記述とは何を指すのでしょうか。

それは、計画の要点等において、図面で表現されている問いは図面と首尾一貫した記述内容となっていることです。また、図面で表現されていない問いは、検討した建築計画、構造計画、設備計画を踏まえて、説得力のある記述内容となっていることです。

例えば、「〇〇の動線について配慮したこと」というよく見かける問いについて考えてみると、「動線」は既に図面で表現されている内容であるため、図面と首尾一貫した記述内容とすることが大切です。一方で、「〇〇室で採用した空調方式とその理由」という問いは、図面で表現されていない内容であるため、検討した設備計画に基づき記述することとなります。

記述力を養う勉強法

では、どのように記述力はどのように養うことができるでしょうか。

それは、定型の記述文を暗記することと、当該年の課題に応じた構造・設備計画を把握することです。

過去の計画の要点等を見てみると、構造計画を始めとして、いくつかの問いは似たようなものとなっていることがわかります。そのため、市販されている「設計製図のウラ指導」などを参考に、定型の回答文を丸暗記することで、いくつかの問いに対応することができます。もちろん、論理的に構造計画を検討して回答できることに越したことはないのですが、部材の断面寸法などは簡単に計算できるものではないため、予め回答を丸暗記しておいた方が効率的です。

また、当該年の課題に応じて、構造・設備計画の基本的な考え方は変わってきます。資格学校に通っていればその年の課題に応じた構造・設備計画の要点を学ぶことができますが、独学だとそうはいきません。そこで、独学の場合に有効なのが、日建学院が出版する「設計製図試験課題対策集」を参照して、課題に応じた計画の要点を把握し、暗記することです。

Kuro
Kuro

過去の事例を通じて定型文を学び、その年の課題に応じた構造・設備計画の要点を学ぶことにより、試験に合格できる記述力を養うことができます。

勉強スケジュール

最後に、プランニング力、製図力、記述力は、どのようなスケジュールで学べばよいでしょうか。

私は、学科試験の終わる7月下旬よりプランニング力と製図力を学び始め、9月以降に記述力の勉強を開始することをおすすめします。

学科試験終了後の製図勉強スケジュール

理由として、プランニング力と製図力を養うためには時間を要する一方、記述力は比較的簡単に向上させることができるからです。そのため、学科試験が終了した直後からプランニングと製図の練習を始めて、この2つの能力を中心的に学び取らなければ、製図試験に合格することが難しくなってしまいます。

Kuro
Kuro

最後までご覧いただきありがとうございました!


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