【回答図面あり】一級建築士試験(製図)を独学で一発合格したときの体験談を紹介します

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一級建築士

こんにちは、独学家(セルフ・ラーナー)のKuroです。

このブログでは、独学での大学受験や資格試験、海外留学についてのノウハウを発信しています。

こちらの記事では、一級建築士試験の学科・製図ともに独学で一発合格したKuroが、製図試験を突破するために実際に行った勉強内容、について紹介します。

学科試験後より製図の勉強を開始

学科試験を7月第4日曜日に終えたのち、自己採点をして、受かっているだろうという感触を得たことから、製図試験の勉強を開始しました。

私は建築・土木系の学科を卒業しましたが、実際に建築物の設計を行ったことは殆どありませんでした。ましてや、一級建築士の製図試験で課されるような規模の建築物の設計をした経験は皆無であり、ゼロからの勉強でした。

私は当時、海外駐在していたことから、学科試験後に日本で製図道具一式を購入して、製図板と共に駐在していた国へ戻りました。そして、帰りの飛行機に搭乗した時から勉強を開始したのです。

独学のために使用した参考書

まず、私が使用した参考書について紹介します。

エスキスと製図方法

学科試験で資格学校のテキストを使用したことに習い、エスキスと製図の方法を勉強するためにも大手資格学校のテキストを使用しました。こちらは市販されていないため、駐在国へ戻る前にフリマで入手しました。

また、市販されている「一級建築士合格戦略 製図試験のウラ指導(学芸出版社)」も併せて使用しました。どちらかというと、エスキスの勉強に当たってはウラ指導の参考書を中心に使用していました。

Bitly

過去問

次に過去問です。

過去問は、(公財)建築技術教育普及センターに掲載されている試験問題と標準回答例を参考にするとともに、ウラ指導に含まれている過去15年分の過去問を参考にしました。

特に、ウラ指導の参考書には製図の解答例に加えて、計画の要点の解答例も掲載されているため参考になります。

課題演習

製図試験に独学で挑む場合、受験年の設計製図の課題(私が受験した平成30年は「健康づくりのためのスポーツ施設」でした)に関する演習問題をどうやって入手するかがカギとなります。過去問題はもちろん参考になりますが、やはり受験する設計製図の課題に沿った勉強を行った方が、効果的に学習することができます。

その中で、日建学院が出している「1級建築士 設計製図試験課題対策集(日建学院)」は大変参考になりました。こちらは毎年、課題テーマに沿って日建学院が発行しており、8月下旬に販売されます。私は家族に頼んでこちらの本を買ってもらい、駐在国まで郵送してもらいました。

Bitly

また、課題テーマの演習として、「1級建築士設計製図試験 直前対策と課題演習(彰国社)」も使用しました。こちらにも6題の想定課題が掲載されており、独学者にとって大変重宝します。

Bitly

しかし、残念なことにこちらの本は令和元年をもって発行停止となってしまったようです。

製図の独学勉強法

次に、設計製図の試験へ向けて行った実際の勉強内容を紹介します。

エスキス力の向上

学科試験を終えたあと、製図試験へ向けてまず初めにエスキス力の向上に手を付けました。冒頭で述べた通り、私は建築物をほとんど設計したことがなかったので、資格学校のテキストやウラ指導の参考書を読み込み、エスキスの進め方を覚えました。

特にウラ指導の方法を基にしてエスキスを進めることにして、少しアレンジを加えながら、試験に当たっては倍コマプラン→1/400プランという2ステップを踏むこととしました。

エスキスの練習のためには、(公財)建築技術教育普及センターに掲載されている試験問題や、ウラ指導に記載されている過去の試験問題を使用しました。練習に当たっては、問題を読み込んだのち、倍コマプラン→1/400プランを実際にエスキスしてみて、標準回答例と照らし合わせました。

製図力アップ

エスキス力の勉強と合わせて取り組んだのが製図力の向上です。私は製図板を使用したのは初めてでしたので、初めて製図板に製図用紙を置いて線を引いたときは少し感動したことを覚えています。

さて、製図力のアップへ向け、先ずは建築技術教育普及センターが公開している過去の標準回答例を実際に転写することから始めました。A2サイズの製図用紙に基準線を引いて、柱を記載し、諸室を描きあげて、什器を描き切るまで最初は6時間程度を要しました。

2年分の過去問を転写した後、自分自身が作り上げたエスキスを基に製図する試みを始めました。これを何度か繰り返すうちに、エスキスを基に製図する流れがつかめるようになり、次第に4時間を切るようになりました。

最終的には、3時間で製図するという目標を立てて製図力の向上を続けました。

設計製図の課題の勉強

8月下旬までエスキスと製図の基本的な勉強を継続した後、設計製図の課題に合わせた演習問題が8月下旬に販売されたことを機に、課題に即した勉強を始めるようになりました。

平成30年は設計製図の課題は「健康づくりのためのスポーツ施設」であり、温水プールが計画内容に含まれることが明示されていました。そのため、温水プールに必要となる設備の概要や、基本的な構造計画に関する理解を深めました。

それと並行して、市販の参考書に掲載されている演習問題を基に、実際に時間を図りながら、問題文の読み込み→エスキス→記述→製図→見直し、という練習を繰り返しました。

また、記述対策のためには、市販参考書の解答例を読み込み、且つ全く同じ内容を転写することで暗記しました。記述問題の多くはパターン化されているので、過去問や演習課題における表現方法を暗記することは、大変有効な対策となります。

過去問の研究

最後に、設計製図の課題対策と並行して、過去問の研究も行いました。

過去問の研究とは、建築技術教育普及センターが公開している過去の問題と標準解答例をよく比較して、設計条件がどのように標準解答例へ反映されているのかを研究する、というものです。課題を解いていると「要求室」の内容に目が行きがちですが、設計条件に記載されている内容は全て重要です。くまなく目を通すようにしましょう。

特に、「Ⅰ設計条件 4.留意事項」に記載されている条件は、合否の決め手となる重要なヒントが隠されています。また、この4.留意事項で記載されている内容は、「Ⅱ要求図書 計画の要点等」において問われることとなります。

例えば、私の受験した2018年の問題では、留意事項の一番目に「隣地のカルチャーセンター、全天候型スポーツ施設及びグラウンドと一体的に使用できるように適切に計画する。」という記載がありました。詳細は過去問をご覧いただければと思いますが、この留意事項を踏まえて最も重要なことは、桜並木沿いの敷地西側にメインエントランスを設けることだと考えました(実際に標準解答例もそのようになっています)。

というのも、出入口は桜並木沿いの南側にあり、この桜並木を通らないとカルチャーセンターと全天候型スポーツ施設へアクセスすることはできないこととなっています。つまり、出題者側の意図としては、出入口(旧正門)を使って敷地全体にアクセスし、並木道を通りながら各スポーツ施設へアクセスできるように計画してもらいたい、ということが読み取れます。

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勉強スケジュール

設計製図試験日までの勉強スケジュールをバーチャートとして示すと、こちらのとおりとなります。私の場合は、先ずは基本的なエスキス力と製図力を向上させて、その後に設計製図の課題に準じた勉強を行いました。

製図試験へ向けた勉強スケジュール

結果として、エスキスや製図方法に関する知識が殆どない状況から、3ヶ月勉強を続けることで合格することができました。

独学の勉強時間と設計製図内容

最後に、実際に必要となった私の勉強時間と、設計製図の内容を紹介します。

1日の勉強時間

学科試験が終わった7月下旬から勉強を開始して、平日は平均1時間30分ほど、休日は6時間ほど勉強しました。

  • 平日:1時間30分
  • 休日:6時間

学科と同様に、平日は仕事があったためなかなか纏まった時間をとることができませんでしたが、何とか1~2時間の時間を見つけて毎日勉強するようにしていました。また、製図は纏まった時間が取れる休日に練習して、平日はエスキスの勉強に充てるなど、使える時間に応じて勉強の内容を変えていました

設計製図合格に要した総合計時間

製図試験までに実際に勉強した時間は、約252時間となります。

  • 平日:1.5時間/日 × 64日 = 96時間
  • 休日:6時間/日 × 26日 = 156時間
  • 合計:252時間

また、最終的に練習したA2の製図用紙は約15枚で、その他にもA3、A4用紙を用いて、1階のみの製図や6×8mスパンの練習など、部分的な製図の勉強をしていました。

設計製図の内容

回答した設計製図を再現すると、こちらとなります。主なレイアウトはこちらのとおりですが、厳密に再現していないことをご容赦ください。

製図試験において回答した図面(1F)
製図試験において回答した図面(2F)
製図試験において回答した図面(3F)

製図試験の主な反省点は、2.3階の廊下が少し曲がってしまったこと、コンセプトルームとキッズルームを1階として、ダンススタジオとトレーニングルームを2階又は3階に計画すべきであったことです。他には、建築面積の計算ミスや、器具庫漏れなど、細かいミスは複数ありました。一方で、図面の完成度と、エントランスの位置、防火区画はしっかりできていたと考えています。

記述(計画の要点)の内容

最後に、計画の要点当で記載した概要を紹介します。問題文は建築技術教育普及センターをご覧ください。なお、私の答えが正しいかは検証しておりませんので、あらかじめご了承ください。

  1. ①東面と南面にルーバーを設置して自然採光をコントロールする、②トップライトを計画して自然採光と自然換気を促す。
  2. ①吹き抜けの周りに壁を設けないことにより、建物の奥まで自然採光を導く、②垂直ルーバーを設置して自然採光をコントロールする。
  3. 受付前において靴の履き替えを行うことにより、明確な上下足分けを図るとともに、盗難防止に配慮する。
  4. 敷地全体の出入口である旧正門からの出入りを考慮して、敷地西側にメインエントランスを設置。また、カフェを敷地南西に設けることにより、旧正門からの出入りを促す。
  5. 構造種別:鉄骨鉄筋コンクリート造。架構形式・スパン割り:8m×6mのラーメン架構とし、プール上部はプレストレストコンクリート梁。上部の床又は屋根の構造・材料:特定天井となるため面積質量を20㎏/m2以下とし、天井材をねじ・ボルトで相互に緊結する。大スパンの大梁:1,200mm×600mm、大スパンの大梁に直交する小梁:80mm×500mm、大スパンの大梁を支持する柱:800mm×800mm。
  6. 下階への振動に配慮し、防音性が高いクッション性のある床材を使用。周囲への騒音に配慮して、周囲に主要な諸室を計画しない。
  7. N値=30の砂礫層を支持層と考え、-2.0mのべた基礎を採用。
  8. 世代間交流を促すコミュニティスペースとして使用する。キッズ用プレイルームの安全性を考慮して、キッズルームの近傍に配置する。また、学校として活用されていたころの記憶を思い起こせるよう、周囲に旧学校時代の写真を展示する。
  9. 面積区画に配慮し、階段、エレベーター、プール上部、吹抜け部分を特定防火設備で区画する。
Kuro
Kuro

最後までご覧いただきありがとうございました!


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