こんにちは、独学家(セルフ・ラーナー)のKuroです。
このブログでは、独学での大学受験や一級建築士試験、海外留学についてのノウハウを発信しています。
こちらの記事では、外部の奨学金を得てアメリカ大学院へ留学を果たしたKuroが、シンガポール国立大学の大学院へ留学するために必要な出願書類と費用、について紹介します。
はじめに
大学院留学を志すとき、留学先として先ず思い浮かぶのがアメリカやイギリス、オーストラリアといった英語圏ではないかと思います。しかし、これらの国へ留学するためには、高い英語力と相応の資金が必要となります。
そこで次に思い当たるのがアジア圏での留学です。フィリピンやインド、そしてシンガポールなど、アジア圏でも英語による大学院留学が可能な国が多くあります。
その中でもシンガポールは教育水準が高く、また治安が良いことでも有名です。

Vision of Humanityが公表しているWorld Peace Indexをみると、シンガポールの安全度は第9位となっています。これは、留学先として人気なイギリス(同35位)やアメリカ(同129位)よりも安全と評価されています。日本が同10位であることを踏まえても、シンガポールは安全な国といえるでしょう。
そこで今回は、シンガポール国立大学に焦点を当てて、大学院留学に必要な出願書類と留学費用を紹介します。
シンガポールの教育水準
まず初めに、シンガポールの教育水準を概観しましょう。
こちらのテーブルは、有名な大学ランキングにおける主要なシンガポール大学の順位となります。
ランキング名 | 大学名+ランキング | 参考 |
---|---|---|
World University Rankings 2022 | National University of Singapore:21位 Nanyang Technological University:45位 | 東大:35位 |
QS World University Rankings 2023 | National University of Singapore:11位 Nanyang Technological University:19位 | 東大:23位 |
Asia University Rankings 2022 | National University of Singapore:3位 Nanyang Technological University:5位 | 東大:6位 |
これを見ると、シンガポール国立大学(National University of Singapore、通称「NUS」)は全てのランキングにおいて日本最高峰の東大より順位が上であり、南洋理工大学(Nanyang Technological University)は3つのうち2つのランキングにおいて東大より順位が高くなっています。
また、シンガポールの公用語は英語、中国語、マレー語、タミール語という4つの言語が指定されており、シンガポール国立大学と南洋理工大学の授業は英語で行われます。
このことから、シンガポールのトップ大学は、アメリカやイギリスにおける有名大学と比較しても目劣りしない教育水準を誇っていると言えるでしょう。
NUSへ留学するために必要な書類

では、NUSへ留学するために必要な願書を見てみましょう。
シンガポール国立大学は16の学部・大学院から成り立つ総合大学です。ここでは、MBA(経営)、Public Policy(公共政策)、Design&Engineering(デザイン・エンジニア)という3つの大学院に絞って見てみます。
出願書類 | MBA | Public Policy | Design & Engineering (建築分野) |
---|---|---|---|
推薦書 | 2通必要 | 2通必要 | 2通必要 |
応募条件 | 職歴 最低2年 | 職歴 最低2~5年 | 建築系学部卒業 または建築関連の職歴 |
GRE/GMAT | 必要 (最低スコアの記載無し) | 任意 | 不要 |
TOEFL/ILETS | 必要 TOEFL:最低100 IELTS:最低7.0 | 必要 TOEFL:100(推奨) IELTS:7.0(推奨) | 必要 TOEFL:最低85~92 IELTS:最低6.0~6.5 |
エッセイ | 必要 | 必要 | 専攻に応じて必要 ※不要の専攻もあり |
履歴書 | 必要 | 必要 | 専攻に応じて必要 ※不要の専攻もあり |
その他 | 要面接 | – | 専攻に応じてポートフォリオが必要 |
これをみると、いずれの大学院も2通の推薦書が必要であり、MBAとPublic Policyへ出願するためにはTOEFLまたはIELTSで高い得点を得る必要があります。また、MBAではGRE/GMATや面接が必要になることも要留意です。
建築分野はTOEFL/IELTSの高いスコアメイクが必要ではなく、またGRE/GMATも不要でとなっています。一方で、建築系の学部を卒業していることやポートフォリオの提出が条件となっています。

シンガポールに限らず、アメリカやイギリスにおいてもMBAでは高い英語力が求められる一方で、建築・デザイン系の大学院ではそこまで高い英語力は求められません。
全般的にみて、シンガポール国立大学へ留学するためには、試験のスコアメイクを含めて、イギリスやアメリカのトップスクールへ出願するのと同等な書類を用意する必要があるといえます。※ハーバードやオックスフォード、ケンブリッジへ留学するためには更に高いスコアメイクが求められます。
NUSへ留学するために必要な費用
次に、NUSへ留学するために必要な費用です。
シンガポールにおける奨学金制度
シンガポールへの留学費用を紹介する前に、シンガポール独特の奨学金制度に触れておきます。
シンガポール国立大学への留学では、Scholarship(奨学金)と、教育省(Ministry of Education 「MOE」)によるTuition Grant(助成金)、という二つの給付金が考えられます。
Scholarship(奨学金)は、予算や収入の状況に応じて与えられるneed-basedと、応募者の競争力に応じて与えられるmerit-basedがあります。need-basedは主にシンガポール国籍者を対象としている一方で、merit-basedは留学生も対象となっています。
シンガポール国立大学のサイトに奨学金一覧がありますので、ご関心のある方はご覧ください。
次に、Tuition Grant(助成金)は、申請に基づきシンガポール教育省から与えられるものです。教育省のサイトによると、シンガポール国立大学と南洋理工大学に限り、留学生でも申請可能となっています。
次から紹介する通り、MOE助成金を申請するか否かで必要経費が大きく異なってきます。
留学に必要な費用
では、実際の留学費用を見てみましょう。
こちらは、MBA、Public Policy、Design&Engineerinへ留学するために必要な合計費用をまとめたものです。※1S$=90円として計算。
項目 | MBA | Public Policy | Design & Engineering |
---|---|---|---|
Tuition Fees without MOE subsidy | S$77,900 | S$88,320 | S$81,600 |
Tuition Fees with MOE subsidy | S$43,000 | S$63,000 | S$43,000 |
Student Service Fee | S$665.4 | S$665.4 | S$665.4 |
Health Service Fee | S$275 | S$275 | S$275 |
Living expenses | S$49,995 | S$49,995 | S$49,995 |
Total without MOE subsidy | S$128,835 1,169万円 | S$139,255 1,253万円 | S$132,535 1,193万円 |
Total with MOE subsidy | S$93,935 845万円 | S$113,935 1,025万円 | S$93,935 845万円 |
これをみると、シンガポール国立大学の大学院へ留学するためには、MOEの助成金無の場合は1,200万円前後、助成金有の場合は900万円前後の資金が必要であることがわかります。
これを高いとみるか安いとみるかですが、参考としてイギリスとアメリカの留学費用はこちらとなります。
大学 | 国 | 専攻 | 留学費用 |
---|---|---|---|
Cambridge | イギリス | 建築・デザイン (2年プログラム) | 約1,560万円 (780万円/年) |
Cambridge (Judge) | イギリス | MBA (1年プログラム) | 約1,230万円 |
UCL | イギリス | 建築・デザイン (2年プログラム) | 約1,400万円 (700万円/年) |
Oxford (Said) | イギリス | MBA (1年プログラム) | 約1,340万円 |
MIT | アメリカ | 建築・デザイン (2年プログラム) | 約2,730万円 (1,365万円/年) |
MIT (Sloan) | アメリカ | MBA (1年プログラム) | 約1,625万円 |
Harvard | アメリカ | 建築・デザイン (2年プログラム) | 約2,350万円 (1,175万円/年) |
Harvard (HBS) | アメリカ | MBA (2年プログラム) | 約2,830万円 (1,415万円/年) |
UC Berkeley | アメリカ | 建築・デザイン (2年プログラム) | 約1,700万円 (850万円/年) |
UC Berkeley (Haas) | アメリカ | MBA (2年プログラム) | 約1,700万円 (850万円/年) |
イギリス、アメリカの大学院を卒業するためには最低でも1,000万円必要となり、アメリカの2年プログラムへ留学するとしたら2,000万円以上の資金を用意する必要があります。
このことから、シンガポール国立大学への留学費用はイギリス、アメリカと比べて安価であると言えるでしょう。

アメリカやイギリスへの大学院留学と比較すると、合計で1,000万円以上の差が出る場合もあります。
NUSへ留学する際の留意点
シンガポール国立大学は教育水準が高く、またイギリス、アメリカと比較して留学費用も安いというメリットがあります。
しかし、シンガポールへの留学はメリットばかりではなく、多少の留意点もあります。
独特の英語
シンガポールは英語を含めた4つの公用語があると紹介しましたが、そのうち5割が第一言語として中国語を使用しています。また、マレー語やタミル語を第一言語とする国民も一定数います。このような言語が入り交じって、シンガポールで話される英語は”シングリッシュ”という独特な訛りやクセを持つものとなっています。
もちろん、シングリッシュでも教育や日常生活は英語なので、留学を通じて英語力を取得することは可能です。しかし、特にリスニングはシングリッシュを前提とした耳になってしまうため、卒業したとしても、イギリスやアメリカの流暢な英語を聞き取ることは難しいかもしれません。
就労義務
もう一つ留意しなければいけないのが、MOE助成金を得て留学した時の就労義務です。
MOE助成金は留学生でも申請できる有難いリソースで、この助成金を申請するかどうかで200~300万円程度の違いがでてきます。しかし、MOE助成金を申請した時に気を付けなければいけないのが、シンガポールにおける3年間の就労義務(Service Obligation)です。
3年間の就労義務とは、修了後にシンガポールに拠点を置く地元企業または国際企業で働かなければいけないというものです。そして、これを破ってしまうと助成金の返済義務が生じてしまいます。
そのため、修了後にシンガポールで働く予定のない人(例えば社費留学のため日本へ帰国しなければいけないなど)は、MOE助成金への申請をよく検討した方がよいでしょう。
まとめ

こちらの記事では、シンガポール国立大学の大学院へ留学するために必要な出願書類と費用を紹介しました。
シンガポール国立大学は、留学先として真っ先に頭に浮かぶであろうイギリスやアメリカと比較しても遜色のない教育水準です。また、留学費用も欧米と比較して安価であることも嬉しいポイントです。
一方で、留学するためにはイギリス、アメリカのトップ校と同等の出願書類を用意する必要があります。また、留学を検討する際は、独特の英語訛りや就労義務がある可能性をよく把握しておきましょう。
こちらの記事が、大学院留学を志している一人でも多くの方のお役に立てば幸いです。

最後までご覧いただきありがとうございました!