一級建築士(設計製図試験):プランニングへつながる課題文の読み取り方を紹介します

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一級建築士

こんにちは、独学家(セルフ・ラーナー)のKuroです。

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こちらの記事では、一級建築士試験の学科・製図ともに独学で一発合格したKuroが、一級建築士・製図試験における課題文の読み取り方、について紹介します。

課題文(問題用紙)の構成

先ず、課題文内の重要なポイントを紹介する前に、課題文の構成を簡単に説明します。

こちらの図は、令和3年の課題文の構成となります。

課題文の構成イメージ

例年、課題文のレイアウトは異なるものの、構成は同じものとなっています(「防火施設の凡例」は平成30年から、「建築物の計画に当たっての留意事項」は令和2年から追加されています)。

では、各々の項目でどのようなことが述べられているのか見てみましょう。

Ⅰ. 設計条件

「Ⅰ. 設計条件」では、Ⅱ.要求図書を作成するための条件が述べられています。関連法規や施主の要求等(設計条件)を踏まえて、建築士が設計する(要求図書)、という構成です。

課題の背景

「課題の背景」では、求められる施設の概要や、留意事項が述べられています。

留意事項は設計する上で重要なポイントとなりますので、見落とさないようにしましょう。なお、令和3年の課題では留意事項が箇所書きで記載されていました。

1.敷地及び周辺条件

「敷地及び周辺条件」では、設計対象となる敷地の形状や、接道条件、周辺環境、容積・建蔽率など、設計の前提条件となることが記載されています。

特に外部環境(接道条件、道路の幅員、周囲地域・建築物の用途、公園の有無)は設計する上で大変重要な情報となります(後ほど詳しく説明します)。

また、容積率超過で失格となるケースは少ないと思われますが、建蔽率超過で失格となるケースはあり得ますので、建蔽率は見落とさないようにしましょう。

定型文となっている「電気、ガス及び上下水道は完備している」「杭打ちの必要はない」「積雪についての特別の配慮はしなくてよい」などは、特に意識する必要はありません。

2.建築物

「建築物」では、設計対象とする建築物の階高や床面積、要求室が記載されています。

要求室は設計の前提条件となりますので、繰り返し読み返して、エスキスの過程で漏れのないように意識することが肝心です。特に、要求室同士の関係性が指定されていたり(事例:令和3年「共用室は屋上庭園から直接行き来できるようにする」など)、要求室をゾーニングする上での留意事項が記載されている場合(事例:平成29年「全ての客室は、名峰や湖の眺望に配慮する」など)は、設計する上での大きなヒントとなります。

なお、令和3年の場合、床面積の合計範囲が記載されておらず、容積・建蔽率の値を基に自身で決める形となっていました。しかし、各要求室の床面積から適当な延床面積を類推できるため、仮に次年以降も同様の出題方式だったとしても、そこまで恐れる必要はないでしょう。

3.その他の施設等

「その他の施設等」では、建築物の外側に計画しなければいけない施設が記載されています。

要求室と同様に、設計の前提条件となりますので、繰り返し見返して、エスキスの過程で漏れのないように意識しましょう。

4.留意事項

「留意事項」は、建築物を設計する上で配慮しなければいけないことが記載されています。

留意事項は採点ポイントを説明してくれているものであり、私は大変重要だと考えています(後ほど詳しく説明します)。

Ⅱ.要求図書

「Ⅱ.要求図書」では、Ⅰ. 設計条件を踏まえて、受験者が考える望ましい設計を表現します。Ⅱ.要求図書は通常、答案用紙Ⅰ(図面と面積表)と、答案用紙Ⅱ(計画の要点等)という2つの図書から構成されています。

繰り返しとなりますが、関連法規や施主の要求等(Ⅰ.設計条件)を踏まえて、建築士が設計する(Ⅱ.要求図書)、という構成です。

1.要求図面

「要求図面」では、答案用紙Ⅰにおいて表現しなければならない情報が記載されています。

基本的には例年、同じ情報の記載が求められますが、年に応じて特有の情報を記載しなければならないため、留意する必要があります(令和3年の各住戸におけるメーターボックス(MB)及び PS、道路高さ制限への適合が確認できる情報(道路斜線、斜線勾配等)、など)。

2.面積表

「面積表」では、建築物の建築面積、各階の床面積、延床面積を答案用紙Ⅰにおいて記載します。

例年同じ記載ぶりであるため特に留意は不要ですが、建築面積は間違いやすいため試験前に計算方法をよく確認しておきましょう(私は本番で、バルコニーの建築面積算定を間違えました)。

3.計画の要点等

「計画の要点等」では、答案用紙Ⅱにおいて回答しなければならない質問が記載されています。

採点ポイントに直結している項目であるため、こちらを予め確認しておくことで、設計する上での留意点を効率よく把握することができます。

防火設備等の凡例

「防火設備等の凡例」では、防火設備等を図示するための凡例が記載されています。

こちらは平成30年以降に記載されている項目で、特に留意は不要と考えられます。

課題公表の再掲

「課題公表の再掲」では、事前に公表されている建築物の計画に当たっての留意事項が記載されています。

こちらは令和2年以降に記載されている項目で、事前に公表されている留意事項を予め把握しておけば、試験本番では留意不要です。

課題文を読み解くポイント

課題文の概要を把握したところで、課題文を読み解くポイントについて紹介いたします。

先ず、私の考える課題文を読み解くポイントはこちらとなります。

  • 特有の留意点を見定める
  • 計画の要点等から類推する
  • 外部環境を意識する

では、それぞれのポイントを見ていきましょう。

その年特有の留意点を見定める

課題文を読み解く最初のポイントは、留意事項の中でも、その年特有の留意点を見極めることです。

ご紹介したとおり、課題文は毎年同じ留意事項とその年特有の留意事項が存在しています。そして、この留意事項の中でも、その年特有の留意事項が、課題文を読み解くカギを握っています。

特に、「.設計条件 課題の背景」と「.設計条件 4.留意事項」は、わかりやすく課題の留意点が記載されています。また、「Ⅰ.設計条件 2.建築物」においても、各要求室との関係性や、外部環境との関係性などの留意点が記載されていることがあります。

「1.設計条件 課題の背景」と「1.設計条件 2.建築物」はその年特有の記載ぶりとなっているため、ここに記載されている留意点は全て意識することが求められます。一方、「1.設計条件 4.留意事項」は、毎年同じ内容とその年特有の内容が混在しています。

例えば、地盤条件や経済性を踏まえた基礎構造、 耐震性や経済性に配慮した架構計画、架構を計画設備機器の搬出入や更新への配慮、防火設備の計画、2以上の直通階段の計画、などは、留意事項として多くの年で記載されています。

他方で、中にはその年特有の記載があります。例えば、平成30年の一体的利用、令和元年の公園への眺望の配慮、令和2年の居室の採光計画、などです。これらはその年の課題背景を反映した留意事項となっているため、試験中はこれらの記載を常に意識してプランニングを進める必要があります。

更に、その年特有の留意事項の中でも、採点ポイントの一つである空間構成に影響すると考えられる留意事項は必ず意識しましょう。最悪、採点ポイントである構造計画と設備計画へ影響する留意事項は見逃しても修正が利きますが、空間構成へ影響する留意事項を見逃してしまうと、プランニングした後に修正しようとしても後戻りができません

オススメ記事「一級建築士試験(設計製図)に合格するためのポイントと必要な能力について解説します」はこちらから

計画の要点等から類推する

課題文を読み解く次のポイントは、「Ⅱ要求図書 3.計画の要点等」から重要事項を把握することです。

課題文をみてプランニングを進める際は、「Ⅰ設計条件」を踏まえてプランニングを進めた後に、「計画の要点等」への回答を考える、というのが通常の段取りかと思われます。しかし、「計画の要点等」には、その年の採点ポイントと留意事項がわかりやすく記載されています。

そこで、プランニングを進める前に、「計画の要点等」をみて、設計条件の一部として意識するのです。こうすることで、採点ポイントを踏まえたプランニングを進めることができ、また計画の要点等の記載もスムーズにこなすことができます。

また、課題文をよく見ると、Ⅰ設計条件の留意事項に記載されていることと、計画の要点等に記載されていることは表裏一体であることがわかります。そのため、仮にⅠ設計条件において留意事項を読み取れなかったとしても、計画の要点等の記載内容を設計条件の一部として意識することにより、留意事項を把握できる可能性が高まります。

外部環境を意識する

課題文を読み解く最後のポイントは、外部環境をよく把握することです。

当たり前のことなのですが、設計対象となる建築物はそれ単体で存在しているものではなく、外部環境と繋がっています。そのため、これもよく言われている当たり前のことですが、外部環境を把握しないとよいプランニングができません。

敷地図を見て、周囲の用途(住宅、商業、公園など)、周囲の建築物(戸建て住宅、集合住宅、公共施設など)、道路の幅員、歩道の有無、をよく把握しない限りには、よいプランニングができません。そして、これらの外部環境を意識しながら要求室の配置を考えることができなければ、外部環境と調和しない建築物となってしまいます。

例えば、私が受験した平成30年の課題では、「隣地のカルチャーセンター、全天候型スポーツ施設及びグラウンドと一体的に使用できるように適切に計画する。」ことがその年特有の留意点として挙げられました(詳しくは(公財)建築技術教育普及センターをご覧ください)。ここで、建築物へのアプローチ位置を検討する際、敷地図をよく見ると、カルチャーセンターと全天候型スポーツ施設は桜並木を通ったアプローチしかなく、周辺道路からのアプローチはないことがわかります。また、駐車・駐輪場から全天候型スポーツ施設へ向かう動線には生垣が設けられていて、通ることができません。つまり、出題者側として何としてでも桜並木を通ったアプローチとしてほしい、ということが見て取れます。

平成30年の課題では、対象敷地の北(駐車・駐輪場)からのアプローチ、南(歩行者専用道路)からのアプローチとした方もいるかと思いますが、正解は西からのアプローチです(標準解答例も西アプローチとなっています)。

平成30年の製図課題イメージ
平成30年の製図課題イメージ

このように、敷地図をよく見ることで、アプローチや要求室の配置を簡単に決めることができ、その後のプランニングをスムーズに進めることができるのです。

最後に

以上が、私の考える課題文を読み解くポイントとなります。

もちろん、要求室の内容やその他の施設等も重要なのですが、これらは必ず配置しなければいけない、パズルのピースのようなものです。そして、そのピースを並べるために意識しなければいけないのが、今回紹介した課題文を読み解くポイントとなるのです。

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